https://zenn.dev/mrt168/articles/0436802896d550
課金者2人でも止まらない設計がいちばん怖い
このZenn記事で二度見したのは、39日で92本のPhaser.jsゲームを自動生成した数より、「課金者は2人。訪問の大半はbot。それでもシステムは毎日動き続けています」と正直に書いているところだった。
普通ならここで折れる。ゲームを作る。公開する。反応は薄い。しかも相手は人間よりbotが多い。個人開発にはかなり痛い数字だ。
でも、このパイプラインは止まらない。毎日13時に自宅のMacが起き、Claude・Gemini・Codexが案を出し、相互投票し、設計し、Phaserで実装し、Playwrightで60秒プレイし、公開ゲートを通ったものだけS3へ送る。VOICEVOXとRemotionで宣伝動画まで作る。
ここで作られているのは、1本の名作ゲームではない。反応が薄くても翌日また出せる。失敗しても次の日に別案を試せる。個人用の小さな制作ラインだ。そこに一番しびれた。
ゲーム単体で売るには、たぶん薄い
正直、この仕組みで毎日出てくるミニゲームを一般ユーザー向けサブスクとして売るのはかなり難しそうだ。作者の記事でも、累計課金転換は2人。失敗というより、商品形態と強みが少しズレているサインに見える。
AIが毎日ゲームを作れるのはすごい。ただ、遊ぶ側から見ると「毎日ミニゲームが増える」だけでは課金理由が弱い。スマホには無料ゲームが山ほどある。短時間の遊びならSNSや動画にも勝たないといけない。
でも、ゲーム売り場から外すと見え方が変わる。小学校の先生が、算数の単元に合わせた5分ゲームを欲しい。地域の店が、スタッフ研修用に接客シミュレーションを欲しい。塾が、英単語や歴史の確認ミニゲームを毎週欲しい。そこなら「毎日ゲームが増える」は娯楽ではなく、教材の更新力になる。
遊びとしては薄くても、授業の5分、研修の導入、イベントの待ち時間に差し込むものなら十分強い。むしろ短く、雑に扱える方がいい。ゲーム会社ごっこより、教材工場として見た方が伸びそうだ。
真似したいのは3AIコンペより公開ゲート
派手なのはClaude・Gemini・Codexを競わせる部分だ。AI同士が案を出し、相互投票し、Claudeが再採点する。見出し映えするし、読んでいて楽しい。
ただ、作る側として本当に盗みたいのは、その後ろにある公開ゲートだ。生成物をそのまま出さず、静的チェック、Playwrightスモーク、視覚ヒューリスティクスで確認し、合格したゲームだけに署名して配信する。不合格なら自動修正を試し、それでもダメなら手動対応に回す。品質を下げてまで無理に公開しない方針に変えた、と記事にある。
AI制作で一番怖いのは、作れることではなく、壊れたものも同じ顔で出てくることだ。起動するけど途中で固まる。見た目はそれっぽいけど遊べない。ルールが分からない。こういう失敗はスクショだけでは分からない。
だから60秒の実プレイテストが効く。Playwrightに数秒ごとにタップさせ、コンソールエラーやページエラーを拾い、フリーズを監視する。これはAIゲームに限らず、AIで作ったWeb教材や診断ツールにもそのまま使える。AIに作らせることより、AIが作ったものを落とす仕組みの方が商売に近い。
自分なら白ラベルの5分シミュ教材に寄せる
この型を自分が使うなら、一般向けゲームサイトにはしない。学校、教室、地域店、企業研修向けに、白ラベルの5分シミュ教材を作る。
たとえば「薬局の新人向け接客ゲーム」「美容室の電話対応ミニゲーム」「中学英語の前置詞ゲーム」「防災訓練の判断ゲーム」。どれも大作である必要はない。むしろ1テーマ1本、短く、スマホで開けて、結果が残る方がいい。先生や店長が欲しいのは世界観の深いゲームではなく、明日の授業や朝礼で使える小道具だ。
記事の構成では、生成は手元のMac、配信はAWSのサーバーレスに分かれている。CloudFront、Lambda Function URL、S3、DynamoDBで、クラウド側は配布、課金、計測に徹する。この分離も教材向きだ。重い制作は手元で済ませ、配信側は軽く保つ。少人数の顧客でもコストが膨らみにくい。
もちろん、教材にするなら課題もある。内容の正確性、年齢に合う表現、先生が直せる編集画面、利用ログの見せ方。このへんは元記事のゲーム工場だけでは足りない。けれど、芯はもうある。Design、Code、Art、Reviewの4エージェント最小構成に絞り、業種別テンプレートを食わせれば、個人でもかなり現実的に作れそうだ。
これはAIゲームの記事ではなく、量産品の選別の記事だ
この記事を読んで残った感触は、「AIでゲームが作れるようになったね」ではなかった。そこはもう驚きの中心ではない。
刺さったのは、AIが作る、AIが落とす、人間はパイプラインを直す、という役割分担だ。アイデア出しも実装も宣伝動画も自動化されている。でも全部を信じているわけではない。60秒プレイさせ、ゲートで落とし、botと人間の訪問を分けて計測し、数字が悪いことも見る。
ここに、個人がAIで何かを作るときの次の型がある。1個を魂込めて作るだけではなく、小さく大量に出して、壊れたものを捨て、使われたものだけ残す。そのためのラインを自分で持つ。
ゲームとして見ると、まだ売り方に迷いがある。けれど、5分教材、白ラベル研修ゲーム、受託サンプル、素材集販売の製造ラインとして見ると、かなり生々しい。課金者2人という数字まで含めて、この実験はおもしろい。売れた夢物語ではなく、売り物になる直前の工場を見せられた感じがした。